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是非に及ばず

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「是非に及ばず」のジャケット画像

その昔 戦乱の世に

一つの大国があった

その国は他国を攻め

次々に富を奪っていた



ある日 貧しき隣国に

豊かな富が眠ると聞き

大国を治める者

陰謀を企てた

己が国の村に

次々と火を放ち

それを隣国の所業と

国中に噂を広めた


大国の民は怒りの声をあげ

戦の支度が始められる

その時隣国を治める者より

一通の文が送られてきた


我は事を成し遂げる者

ここに記す全ては誠

此度の件は我が国に

何の関わりもなきこと

調べを尽くしてもなお

当方の非と定めるなら

その時は是非に及ばず

何時でもお相手致す

その決断誤りなきよう



その文を読み終えた

大国を治める者

怒るふりを見せて

愚か者めと笑う

力の差は歴然であり

出向くまでもないが

民の支持を集めんと

自らが大将をかって出た


兵を整え国の境目で

両軍の睨み合いが始まる

その時隣国を収める者より

一通の文が送られてきた


我は事を成し遂げる者

命かけ今ここに立つ

これより先は我が領内

何人たりとも立ち入らせず

それでも道を引き返さず

戦うことを選ぶのなら

その時は是非に及ばず

命なきものと心得よ

その決断誤りなきよう



どこまでも愚かな者と文を捨て

軍に攻撃の号令をかけると

隣国の兵は一歩も退かず

各々が口を揃えて同じことを言う


我は事を成し遂げる者

情けを捨て前に進む

我が前に立ち塞がるなら

何人たりとも容赦せず

覚悟のなき者は直ちに

この場から立ち去るがよい

臨むなら是非に及ばず

修羅となり薙ぎ払うのみ

これ以上何も語ることはない



ついに戦いが始まり

両軍がぶつかり合うも

隣国の兵の強さに

大軍が押され始める

ならば数で取り囲めと

次々に兵を送るも

ことごとく返り討ちにあい

大軍に戦慄が走る

気付けば軍は総崩れ


さらに勢いを増す

鬼神の如き進軍に

大軍は戦意をなくし

大将の顔は青ざめる

もはや勝てぬと兵を見捨て

わずかな側近だけを連れ

逃げる大将の背中に

飛んできた矢文が突き刺さる

二度と決断誤りなきよう



その昔 戦乱の世に

一つの小国があった

その国は負けることなき

最強の国と恐れられた